|
診療案内のページへ戻る
予防接種のページメニュー (知りたい項目をクリックしてください)
○予防接種はなぜ必要なの?
○標準的な接種スケジュール
○接種当日に必要なもの
○費用
○予防接種の対象となる病気の特徴
1.ジフテリア
2.破傷風
3.百日咳
4.麻疹
5.風疹
6.日本脳炎
7.水痘(みずぼうそう)
8.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)
9.ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib:ヒブ)
10.肺炎球菌
11.インフルエンザ
12.パピローマウイルス(子宮頸がんウイルス)
○予防接種はなぜ必要なの?
予防接種の対象となる病気(結核、ポリオ、麻疹、風疹、ジフテリア、百日咳、破傷風、水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌、インフルエンザ菌b型、インフルエンザウイルス、パピローマウイルスほか)には、下記の特徴があります。
1.感染が起こってからでは治療ができなかったり、長い時間症状に苦しんだり、大きな合併症を起こしたり、時には重い後遺症や生命の危険が生じることがあります。
2.また子どもの頃にこうした感染症に幸いかからなかったとしても、おとなになってからかかるとさらに重症になる危険性が高くなる病気もあります。
3.こうした感染症にかかると、定められた期間保育所や学校を休まなくてはならないため、とくにご両親ともにお仕事をされている場合などは、仕事への影響も大きくなります。
4.また予防接種はその接種率が下がると、地域での流行を止めることができなくなるので、自分だけの問題としてだけでなく、地域の問題として考えることも重要です。
そのため、こうした病気は予防接種で防ぐことが大切です。
このページの先頭に戻る
○標準的な接種スケジュール(図・表)
予防接種の対象年齢、標準的な接種年齢、接種間隔・回数や、接種スケジュールについては、図・表を参照してください。
BCG、ポリオは保健所での集団接種となります。三種混合(DPT)、二種混合(DT)、麻疹・風疹混合(MR)、日本脳炎、水痘、おたふくかぜ、肺炎球菌、ヒブ、インフルエンザワクチン、パピローマウイルス(子宮頸がんウイルス)は当クリニックで個別接種しています。
不活化ワクチン(DPT、DT、日本脳炎、肺炎球菌、ヒブ、インフルエンザ、パピローマウイルス)は、接種後1週間で他のワクチンの接種が可能となります。一方弱毒生ワクチン(BCG、ポリオ、MR、水痘、おたふくかぜ)は、接種後4週間後より他の予防接種が可能となります。どのように接種スケジュールを立てたらよいのかわからないときは、ご相談下さい。
当院では、毎週金曜日の午後に、予約制で予防接種を行っています。これは、小児科を受診するお子さんはかぜのことが多く、外来でうつしっこしないようにするためです。時間的に受診が難しい場合は、個別の相談にも応じさせていただきます。
このページの先頭に戻る
○接種当日に必要なもの
保険証、母子手帳、予診票、印鑑を忘れずにお持ち下さい。
発熱など、接種当日に体調不良の場合は、医師の判断で、予防接種を中止・延期することもあります。ご了承下さい。
このページの先頭に戻る
○費用
※1 公費対象となるのは、勧奨接種期間中のみです。
この期間をはずれると自費接種となります。忘れずに接種してください。
※2 MR、麻疹、風疹の第3期、第4期は、2回接種法が始まる前に小学生になったために、1回
接種しかしていない人を対象に、平成20年から5年間の経過措置として行われます。
対象となる人は以下のとおりです。
○第3期(平成7年~平成12年生まれの人):中学1年生の1年間が対象となります。
○第4期(平成2年~平成6年生まれの人):高校3年生の1年間が対象となります。
|
※3 日本脳炎の新ワクチンは、製造本数が少ないことや、有効性・安全性について大規模な
結果が得られていないこともあり、現在は第1期の未接種者のみが対象となります。
接種差し控えの時期に当たったために接種できなかった人についての対応は、現在専門
機関で協議中です。何らかの救済措置が講じられる可能性が高いですが、今のところ具
体的なことは何も決まっていないです。
旧ワクチンは、平成22年3月9日を持って、製造中止となりました。
※4 ヒブワクチンは、現在1つの診療所につき3人までと決められているため、数か月待ちの
状況です。希望される方は、診療所まで一度お問い合わせ下さい。
※5 インフルエンザワクチンの費用は1回目が3000円、2回目が2000円となっています。
このページの先頭に戻る
○予防接種の対象となる病気の特徴
1.ジフテリア
ジフテリア、破傷風、百日咳などの三種混合ワクチンの対象となる病気は、菌が出す毒素が原因となって重い症状をきたし、生命の危険が高く、かつ発症してしまうとどれも治療に苦労するものばかりです。こうした病気を防ぐ唯一の最も効果的な方法が予防接種です。
ジフテリアは、ジフテリア菌によっておこり、戦前は患者数・死亡者数ともに非常に多い病気でした。その後予防接種の普及や衛生状態の改善その他の努力により、先進国では大きな流行はなくなっています。日本でも、1945年(昭和20年)に8万6千人の患者が報告され死亡率は約10%でしたが、1988年~1997年(昭和63年~平成9年)の10年間では33例(死亡1例)と激減しています。しかし、旧ソ連の崩壊などで社会が混乱した1990年から1996年にかけては、旧ソ連邦諸国で15万人以上の患者が発生し、1万人以上が死亡するなど、決してなくなった病気ではなく、油断すればすぐに流行しはじめる可能性のある病気です。
ジフテリア菌は皮膚・粘膜に付着して増殖し、その部位に炎症を起こし、その部位が壊死して固まっていきます。のどの粘膜で増殖した場合、壊れて固まった粘膜-偽膜という灰褐色の革のように見える膜-を形成し広がっていきます(「ジフテリア」とはギリシア語で「なめし革」を意味する言葉が元になっています)。この膜ははがれにくく無理にはがすと出血します。これが気管の入口である喉頭というところまで広がると、窒息の危険があります。進行も早く数時間で広がることも多いのです。このときには、「クループ」と呼ばれる特有の犬が吠えるような咳や、息を吸うときに「ヒュー」という音が聞こえたりします。この場合は、気管内に管を入れ、人工呼吸器が必要となることもあります(ジフテリア以外のウイルスなどの感染症でも似たような症状をきたすことがあり、ジフテリアのクループと区別するため、以前は「仮性クループ」と呼ばれていました。これは軽症であることがほとんどです)。
ジフテリアの症状はこれだけではありません。ジフテリア菌で毒素を産生するものの場合、この毒素が血液中に入り心臓や神経が障害され、生命に関わる合併症が起こることがあります。のどのジフテリアでは、感染後多くは2~3週間後に、心臓の筋肉が障害されて心不全や不整脈を起こして突然死したり、神経が障害された場合は、のどの麻痺や、眼を動かす神経が麻痺したり、手足の筋力が低下したりします。中毒症を発症した場合は、通常の抗生剤治療は無効であり、抗毒素血清で治療しなければなりません。回復するのにも長期間かかります。
ジフテリアの症状を防ぐ唯一の方法は、ワクチンしかありません。ワクチンの効果も一生は続かないため、乳幼児期の基礎免疫の後、小学校での追加免疫が必要となります。
このページの先頭に戻る
2.破傷風
破傷風菌は、土、ホコリ、動物の腸内など、世界のどこでもいたるところにみられる菌で、乾燥や熱に強く長期間生存できる芽胞の形で存在しています。
破傷風を発症するのは、主に予防接種をしていない人です。犠牲者が最も多い発展途上国では、新生児や出産後の母体の破傷風が多く、主に出産に伴って起こります。世界では、1年間に50万人の赤ちゃんと1.5~3万人の母親が死亡しています。予防接種の普及により、先進国では発症者は少ないですが、日本でも年間30~50例の患者が発生しており、死亡率も30%程度と高いです。発症者のほとんどが35歳以上の成人で、小児ではまれですが、これは予防接種の効果と考えられます。
新生児以外では、刺し傷や、火傷、虫刺され、ピアスその他からだの傷が元になって破傷風を発症することがあります。破傷風の症状は破傷風が出す毒素により起こります。毒素はテタノスパスミンといい、毒としてはボツリヌス毒素に次いで2番目に強い毒で、体重10 kgのお子さんでは、致死量はわずか0.1 μg(1 μgは、1 mgの千分の1です)という非常に強力な毒素です。
人間の筋肉は、神経の指令により縮んだり伸びたりして、微妙な調節を受けながら、体を動かしているのですが、破傷風毒素は神経の働きを抑える神経(運動抑制ニューロン)を働かなくさせてしまうため、体の筋肉が強く縮んだままとなります。顔の筋肉が強く縮んだままだと、口が硬く閉じたまま開けられない(開口障害)、顔の筋肉がひきつってまるで笑っているように見える(痙笑)などの症状がみられます。全身の筋肉に同じことが起こると、体がどんどん弓なりに後ろに反っていき、頭とかかとがくっつくくらいになります(後弓反張)。さらにつらいのは、脳や感覚神経は障害されないので、意識も正常で、痛みも正常に感じることができるため、強い痛みがまともに続くことになる、ということです。
破傷風は予防接種でしか予防できない病気ですので、必ず予防接種しておくことが大切です。ジフテリアと同様、予防接種の効果は一生は続かないため、乳幼児期の初回投与の後、小学校4年生での追加免疫が必要となります。
予防接種をしていない場合、けがをした時は、小さい傷でもすぐに予防接種を受けることが大切ですし(予防接種をしていないために、木の枝でのほんのちょっとした足のひっかき傷から、破傷風を発症したお子さんがいます)、とくに犬その他の動物に咬まれた場合は必ずすぐに予防接種を受けなければなりません。また大きな怪我(開放骨折など)の場合は、予防接種に加えて、破傷風抗毒素抗体という血液製剤を投与しなければならないことがあります。また他の病気と異なり、破傷風は1回かかっても免疫は獲得されないため、やはり予防接種が必要となります。
全身型の破傷風を発症してしまった場合、外傷部位の外科治療や抗生剤治療や抗毒素治療でそれ以上病気が進行しないようにしますが、すでに神経内に取り込まれた毒素は中和できないため、筋強直発作が治まるまでの数週間は、集中治療室での全身管理が必要となります。
このページの先頭に戻る
3.百日咳
主に百日咳菌によって起こります(時にパラ百日咳菌)。自然にかかっても、予防接種をしても、どちらも免疫は一生続かないため、一生の間に何回でもかかる可能性があります。日本でも周期的に流行がみられており、決してめずらしい病気ではありません。思春期年齢の子どもや成人で、7日以上咳をしている人のおよそ3人~7人に1人(13~32%)が詳しく調べると百日咳であったとの報告が多くあり、実際思った以上に多いかもしれません。
百日咳菌は、咳をしている人から飛び散った唾液から伝染します。家庭内などで密接に接触している環境では、免疫のない人はほぼ100%伝染するといわれており、免疫がある人でもおよそ80%の人が、症状は出ないものの百日咳に感染しているといわれています。子どもに百日咳が見つかった場合は、多くが家族からうつっており、よく調べると家族内で咳をしている人が見つかることも多いです。
百日咳菌は、呼吸線毛上皮細胞という細胞にのみ接着し、そこで百日咳毒素をはじめ、数多くの生理活性物質を産生します。線毛細胞が破壊され、菌が除菌されるのを防ぎ、体内に毒素が吸収されるようになります。百日咳毒素を中心として、これらの物質により百日咳症状が出ると考えられていますが、どのようにこうした症状が出るのかについては、まだ詳しく分かっていません。
百日咳の症状は、年齢や予防接種をどのくらい受けているか、かかったことがあるか、などによっても大きく変わってきます。ある程度免疫のある場合は、咳が長く続くだけということが多いです(そのためなかなか診断がつかない、ということもありえます)。
全く予防接種や治療を行わない場合の典型的な症状は、3~12日の潜伏期のあと、カタル期といって1~2週間くらい鼻かぜのような症状が続きます。この時期の症状は、微熱、鼻水、くしゃみ、眼がうるんでいるなど、ふつうのかぜの症状とまったく同じで、見分けはつきません。その後かぜ症状が治まってくると、発作期という百日咳に特徴的な症状が出始めます。コンコンとした乾いた咳から始まり、徐々に自分で止めることのできない激しい咳発作へと変わっていきます。元気にしている子どもが、急に不安そうな顔で親にしがみつくようになり、それから休みのない機関銃のような激しい咳き込みが出ます。顔は紫色となり、眼が突出し、アゴや胸、舌を精一杯前に突き出します。息ができないくらい咳発作は強いので、発作が治まると、とにかく息をしなければと、一生懸命息をヒューと吸い込みます。これを''Whooping''(フーピング)といい、百日咳に特徴的な症状です。咳き込んだ後に嘔吐することも多いです。この発作は、日や週が経つにつれてますます重くなり、発作の回数や重さがひどくなっていき、もっともひどいときは1時間に1回以上こうした発作が起こります。この発作期は6~10週間続き、本人は疲れ果ててしまいます。その後回復期になり、発作の回数や重さ、持続時間も減り、2週間以上かけてゆっくりと回復していきます。全部で3か月近くかかるので、まさに「百日咳」です。
百日咳がなぜ予防接種を受けなければいけない病気なのかというと、1歳未満とくに生後6か月未満の赤ちゃんがかかると重症になり、生命にかかわる合併症を起こす可能性があるからです。とくに2か月未満の赤ちゃんの死亡率は約1
%と高いです。赤ちゃんの場合は、百日咳の特徴的な症状がみられないこともあり、急に呼吸が止まったりする(無呼吸)のが唯一の症状であったりします。無呼吸による低酸素血症や、強い咳き込みが続くことによる脳出血が原因となって痙攣や脳症を発症したり、別の細菌がさらに感染して重症の肺炎を起こしたりして、これらが死因となります。そのため赤ちゃんのうちに予防接種しておくことが重要ですし、赤ちゃんの予防接種が無事完了するまで赤ちゃんに百日咳をうつさないようにするためにも、地域での流行を防ぐために全員がワクチンを接種しておくべきです。
このページの先頭に戻る
4.麻疹(はしか)
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによっておこり、かつてはほぼ全てのお子さんがかかり、症状も重い病気でした。現在根絶されている天然痘が、あばたが残ってしまう「器量取り」といわれたのに対し、麻疹は「命取り」といわれるくらい、麻疹を乗り越えることができるかどうかが、子どもが長生きできるかどうかの大きなの関門のひとつでした。
予防接種により麻疹にかかる人は減っていますが、日本では、いまだに患者が見られています。また最近では、予防接種をしているにも関わらず、大人になってから麻疹にかかる人がでてくるようになりました。これは、今までは予防接種を1回しておくと、流行のときに知らない間に麻疹ウイルスと接触することになり、このときに免疫が強化されて、維持されるため(ブースター効果)、麻疹にかかることがなかったのですが、流行が少なくなったために麻疹ウイルスと接触することがなくなり、免疫が維持できなくなってしまったからです。そのため、現在は2回接種法に変わっています。このことからもわかるように、麻疹は過去の疾患ではありません。
麻疹ウイルスは感染力が強く、麻疹にかかっていなかったり、予防接種をしていない人(感受性者)が麻疹患者と接触すると、90%が発症するといわれています。空気感染するため、麻疹にかかっている人が部屋を出ても、1時間くらいはウイルスがその部屋の中の空気中に漂っています。麻疹ウイルスは鼻やのど、眼の粘膜から感染し、増殖し、リンパや血液を通して全身に拡大していきます。全身の細胞に感染し、細胞を壊したり、巨細胞と呼ばれる塊に変えていきながら増えていきます。
麻疹の通常の経過は、8~12日の潜伏期のあと、カタル期といって、発熱、鼻水、咳、結膜炎といった風邪症状が始まります。経過とともに症状は悪くなっていき、「この子は大丈夫かな?」と思うくらい発熱、咳がひどく、眼がしょぼしょぼとして目やにが多くなり、ぐったりしていきます。この時期は、口の中のほっぺたの粘膜に、コプリック斑と呼ばれる中心が灰色をした、周囲が赤いブツブツが出現し、診断の手がかりとなります。カタル期が4~5日続いた後、体中に発疹が出現し発疹期に入ります。発疹は頭の生え際や耳の後ろより始まり、全身へ拡がります。発疹は小さいブツブツが一つに融合する傾向があり、全体的に赤黒く見えます。発疹が出現して1~2日すると、発熱や咳が治まってきて、体も楽になってきます。発疹は7日くらいかけて治まっていきます。皮膚の皮がぽろぽろとめくれたり、色素沈着といって、発疹のあとが残ることもあります。また麻疹は栄養状態が悪いとき、とくにビタミンAが欠乏している状態では、症状が重くなることが知られています。通常の経過でも発熱が1週間以上続き、重度の気管支炎になります。
麻疹はこれだけではおさまらず、生命の危険をおよぼす肺炎や脳炎といった合併症を起
こすことがあります。肺炎は麻疹ウイルスそのものによる肺炎や、体の抵抗力が低下することよる細菌性の肺炎などがあります。米国の報告では、麻疹患者のおよそ20人に1人(5.9%)が肺炎をきたし、脳炎はおよそ1000人に1人の割合(0.1%)でかかります。こうした合併症は、こどもの時期よりもおとなになってからかかった方がさらに多くなることがわかっています。脳炎になると6人に1人(15%)が死亡し、5人に1~2人(20~40%)が重い後遺障害に苦しみます。他に非常にまれですが、麻疹に感染して7~10年経ってから亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる脳炎が起こることがあります。麻疹の死亡率は0.1~0.3 %と高く、1000人のうち1~3人が死亡する計算です。
麻疹は小児科医が最も予防してほしいと考えている病気の一つです。麻疹によって「命取り」とならないよう、しっかりと予防接種をしておくことが極めて大切です。
このページの先頭に戻る
5.風疹(三日はしか、ドイツはしか)
風疹(三日はしか、ドイツはしか)は、風疹ウイルスにより起こる感染症で、予防接種が開始されてからは、あまり見ることがなくなってきています。主に子どもがかかり症状は軽いのですが、大人になってかかると症状が強く出ます。風疹で最も重要なのは、妊娠初期にお母さんに感染してしまうと、先天性風疹症候群といって、おなかの赤ちゃんに重度の障害で起こる可能性があることです。予防接種が行われる前の米国では、1964年から1965年にかけて風疹の大流行があり、2万人の先天性風疹症候群患者が発生し、うち1万1千人が自然流産や人工妊娠中絶となり、2100人が新生児期に死亡しているという記録があります。
風疹ウイルスは鼻やのどの粘膜に感染後、リンパ管を通してリンパ節に拡がりそこで増殖し、その後血液から全身に広がります。潜伏期は14~21日間で、微熱、のどの痛み、眼の充血、頭痛、全身のだるさ、食欲の低下などの前駆症状とともに、発疹が出現します。発疹は粟粒くらいの大きさの小さいピンク色のもやもやした発疹で、顔や首から全身に拡がっていきます。体や手足の発疹ははっきりとした形に見えることが多いです。発疹は3日間ほどで消えていきます。発疹出現前後7日間はウイルスを排泄しているため、他の人に伝染する可能性があります。
風疹の症状は、ふつう軽く、生命の危険はありません。合併症としては、血小板減少症、関節炎、脳炎、ギラン・バレー症候群、末梢神経炎、心筋炎などがあります。血小板減少症は、3000人に1人くらいで見られ、皮膚の点状出血や、鼻血、下血、血尿などの症状をきたすことがあります。関節炎は、成人、とくに女性に多く、発疹出現後1週間くらいでみられ、手の関節などに起こりやすいです。数週間で治っていきます。脳炎が最も重度の合併症で、頭痛、痙攣、意識障害、麻痺、運動失調症状などの症状があり、治る場合は完全に回復することが多いのですが、死亡したり重度の後遺症が残ることもあります。
妊娠初期のお母さんが風疹にかかると胎児に風疹ウイルスが感染し、先天性風疹症候群をきたすことがあります。妊娠10週までにかかると90%以上の赤ちゃんが影響を受け、その後週数ごとに影響をうける可能性は減っていき、17週以降では大丈夫となります。難聴が最も多く、次に多いのが白内障や先天性心疾患などです。脳が障害され発達への影響が見られることもあります。
風疹は、25~40%の人はかかっても症状が出なかったり、症状が出ても他の病気と紛らわしかったりすることもあります。風疹にかかったかどうかは、採血検査で風疹抗体価を調べることによりわかります。
風疹は1回かかると、再感染しても、知らないうちに治っていたり、症状がでても軽いのですが、妊娠初期のお母さんの場合は、お母さんが大丈夫でも、おなかの赤ちゃんに影響が出ることがあります。そのため地域での流行を防ぐことがとても大切です。流行を防ぐには地域の風疹の予防接種率を90%以上に保つことが必要です。自分を守るだけのみならず、これから生まれてくる赤ちゃんたちの未来を守るためにも、ぜひ予防接種を受けておきましょう。
このページの先頭に戻る
6.日本脳炎
日本脳炎ウイルスは、日本を含め、東アジア・南アジアに広く分布しています。主にブタ・ウマなどの大型の家畜で増え、これらの動物を吸血して日本脳炎ウイルスに感染したコガタアカイエカなどの蚊が、ヒトを吸血することにより伝染します。ヒトからヒトへの感染はありません。
日本・韓国・台湾などでは、予防接種によりほとんど日本脳炎の患者がみられなくなっています。日本での発生状況は毎年10人未満で、そのほとんどが中高年の方ですが、2006年には熊本県で3歳のお子さんが日本脳炎にかかっています。一方で、ブタが日本脳炎にかかっているかを調査すると、九州・四国・近畿・関東地方などでは、7月中旬ころからブタの日本脳炎抗体価の陽性率が上昇しはじめ、夏の終わりまでには80%を超えるブタが日本脳炎にかかっていることがわかります。日本脳炎ウイルスはブタなどの動物の中では毎年流行しており、確実にいることは確かです。
日本脳炎ウイルスに感染してもほとんどの人は症状が出ずに治ってしまいます。症状が出る場合は、6~16日の潜伏期のあと、発熱、頭痛、嘔吐などの症状で発症し、その後痙攣、意識障害等の脳炎症状が出てきます。脳炎を発症してしまうと、約1/3が死亡し、生存者の40%は重い後遺障害に苦しむことになります。
日本脳炎を防ぐために予防接種が行われてきました。予防接種を受けた人の中で、急性散在性脳脊髄炎(ADEM、アデムと読みます)と呼ばれる副作用のうち、重い症状となる方が出ました。因果関係は不明なのですが、より慎重に対応するということで、平成17年5月より、定期勧奨予防接種が差し控えとなっており、希望者以外には強く勧めないということになっていました。
科学的な因果関係は不明なものの、マウスの脳に日本脳炎ウイルスを接種して増殖させてつくられたワクチンから重症の副作用が発生していることから、培養細胞を用いて日本脳炎ウイルスを増殖させた乾燥細胞培養ワクチンが新たに開発されることとなりました。ただワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎は、まったく別のワクチンや、他の国の乾燥細胞培養ワクチンでもみられています。日本脳炎の新ワクチンは、平成21年2月23日付けで薬事法上の承認を受け、京都市では6月2日より定期予防接種として再開されました。現在はワクチンの供給量も全ての対象者を満たすほどはなく、また多くの人へ接種した場合の安全性も確認されていないこともあり、当面は3~7歳の1期予防接種対象となる人のうち、ワクチンを全く接種していない人が対象となります。
このページの先頭に戻る
7.水痘(みずぼうそう)
水痘ウイルスは、ヘルペスウイルスの仲間です。初めて感染を起こした場合、水痘(みずぼうそう)の症状で発症しますが、免疫が成立すると背骨の中にある脊髄の知覚神経節という部分の神経細胞内にもぐりこんで、一生潜伏感染します。体調不良などにより免疫力が低下したときに体内で押さえ込まれていたウイルスが再活性化されて帯状疱疹として再発することがあります。病気の形は変わりますが同じウイルスが原因です。1回かかると新たな水痘ウイルスによる感染は起こらなくなります。
水痘はほとんどが15歳未満でかかります。1歳から9歳までにかかった場合は、軽く済みますが、1歳未満の児(お母さんが水痘にかかっていない場合)、思春期以降、成人、免疫機能が低下している場合(妊婦、高用量の長期全身ステロイド投与を受けている場合、抗がん剤投与を受けている人、HIV感染症など)は、重症となることがあります。重症の細菌二次感染や、重度の肝障害、肺炎、脳炎、重度の出血、などをきたすことがあり、死亡することもあります。水痘にかかっていないお母さんが妊娠初期に水痘にかかった場合、まれですが(2%以下)お腹の赤ちゃんの手足や脳に影響が出ることもあります(先天性水痘症候群)。全体の死亡率は10万人当たり2~3人と多くはありません。1~9歳の死亡率は10万人に1人未満と少ないですが、1歳未満の乳児は4倍、成人では25倍と高くなります(未治療の場合)。
水痘の経過ですが、水痘ウイルスと接触しておよそ2週間後に発症します。学童期以降や成人では、38℃程度の発熱、全身がだるい、食欲がない、頭痛、軽い腹痛などの症状が先に見られることもあります。頭・顔・体を中心に、かゆみの伴う赤い発疹が出現しはじめ、発疹は徐々に透明な液体が貯留した水疱となり、中心部が凹んで液が濁ってきて、最後にかさぶたになります。それと同時に新たな発疹が体から手足へと拡がっていきます。新しい発疹と、かさぶたになった古い発疹が混ざっているのが、水痘の発疹の特徴です。発疹は皮膚のみならず、のどや性器の粘膜に見られることも多いです。家族から感染した場合や、年長児では、発疹の数が多くなり出現期間も長くなります。アトピー性皮膚炎などの湿疹や火傷などの皮膚病があったりすると症状が強くなります。発疹の経過は5~7日程度です。発疹はほとんどが痕を残さずに治りますが、細菌感染などが重なると痕が残ることもあります。水痘ウイルスの再活性化による帯状疱疹は、小児では少なく、症状も成人に比べて軽いです。
とくに健康に大きな問題のないお子さんが水痘にかかった場合、抗ウイルス薬(アシクロビル)を投与すると、経過を軽くしたり、重症化を防ぐことができます。ただ、抗ウイルス薬は高価で副作用の可能性もあるため、全ての人に一律に投与するわけではなく、1歳未満のお子さんでアトピー性皮膚炎や喘息などの病気のある場合、13歳以上のお子さん、ステロイド投与を受けている場合、川崎病などにかかった後でアスピリンを内服している場合(みずぼうそうやインフルエンザのときにアスピリンを使うと、ライ症候群という脳症を起こすことがあることが知られています)、家族からうつった場合(多量のウイルスを浴びているので症状が強くなりやすいです)、などの重症になるリスクが高くなる人では、抗ウイルス薬を使用すべきとされています。免疫力が低下しているなど、重症化の危険性が高いお子さんでは、免疫グロブリンによる予防など、かなり注意した管理が必要となります。
発疹出現の1~2日前から発疹が全てかさぶたになるまでが、他の人への伝染期間となります。水痘患者の唾液などの分泌物や、水疱内の液にウイルスが含まれ、空気感染や直接の接触で伝染します。そのため、この期間は家でじっとしていなければならず、学校に行くことも禁止されています。買い物などの外出も控えてください。
水痘の予防接種は任意接種です。水痘は子どもの頃にかかることが多く、そのほとんどが軽症です。しかし、まれに重度の合併症をきたすことがある、伝染性が強く接触するとかなりの高率で発症する、子どもの頃にかからなかった場合大人になってからかかると重症化する、治るまでに1週間程度かかりその間外出が禁止されご両親が共働きなどの場合は仕事を休まなければならなくなる、などを考慮のうえ、接種されるかどうか決められるとよいと思います。また、水痘の患者さんと接触した場合、3~5日以内にワクチンを接種すれば、ワクチンの効果の方が先に出現するため、水痘の発症が予防できたり、軽症化させたりすることができます。
水痘の予防接種を行うと、およそ80%が水痘の予防ができ(報告により異なりますが、予防効果は70~100%の間です)、またかかっても軽く済むようになります。また重症の合併症は95%以上の確率で防ぐことができます。帯状疱疹の発症率も自然にかかった場合よりも少なくなるといわれています。米国では全員に接種することにより地域の流行がなくなり、白血病などの重症になる危険が高いお子さんへ伝染することが減少した、という効果も認められています。
このページの先頭に戻る
8.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)
流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスが原因で起こります。主に5~9歳のお子さんにみられ、唾液により伝染します。感染すると、のどや、耳の下にある耳下腺で増殖し、リンパ管を経由してリンパ節から血液を経て全身に拡がり、髄膜炎や精巣炎などの合併症を起こしたりします。ムンプスウイルスの感染症は、全ての人が発症するわけではなく、知らない間にかかっていることもあります。
流行性耳下腺炎の患者さんと接触後、ふつう16~18日くらいの潜伏期間の後、最初は片方の耳下腺が腫れて痛くなってきます。その後もう片方の耳下腺も腫れるようになります。およそ70%の人が両方とも腫れます。同じ期間に38~40 ℃程度の発熱が見られることも多いです。腫れる1~2日前より、発熱、頭痛、嘔吐、痛みなどの症状が先に出ることもあります。下あごの形がわからなくなるくらい腫れてきます。ひどいと数時間で別人のように顔が変わってしまいます。本当におたふくのようです。3日目くらいが最もひどく、7日くらいかけてよくなっていきます。
耳下腺が腫れる病気はほかにもあり、ときに紛らわしいこともあります。その場合は、採血検査でムンプスウイルスに対する抗体価の検査を行うのが有効です。採血はおたふくかぜの症状があるときと、治ってから2週間目くらいのときの2回の検査が必要になります。
のどや耳下腺で増殖したムンプスウイルスは、その後血液から全身に拡がります。脳に入りやすく、10~30%の人に無菌性髄膜炎を合併します。よくあるのは、おたふくかぜとわかってから5日目くらい、そろそろ治りかけたかな、と思う頃に再び発熱と強い頭痛、嘔吐の症状で発症します。ときに脳炎になることもあります。後遺症なく治ることがほとんどですが、数日の入院が必要になります。髄膜炎かどうかは、髄液検査で診断します。難聴は2~20万人に1人くらいと多くはありませんが、かかってしまうと治すことは難しいです。
思春期以降のお子さんや成人の男性がかかった場合、30~40%の人は精巣炎を合併します。うち両方とも精巣炎になるのは、1/3以下の人です。精巣炎になると精巣が萎縮をしてしまうこともあります。ただ両方とも精巣炎になっても不妊になることは稀といわれています。他には膵炎をきたすこともあり、この場合、発熱、胃のあたりの痛み、嘔吐などの症状があります。重症になることはあまりありません。なぜそうなるのか詳しくはわかっていないのですが、膵炎の後に1型糖尿病を発症するリスクが高くなることが指摘されています。他にまれですが心筋炎、関節炎、腎炎、甲状腺炎などを起こすことがあります。
耳下腺炎の治療は、とくに有効な薬はないため、痛み止めなどの対症療法が主体となります。すっぱいものを食べると痛みが強くなるため、避けた方がよいでしょう。耳下腺が腫れている間は、ウイルスが排泄されているので、他の人にうつらないよう外出は控えてください。学校などに行くことも禁止されています。
ムンプスウイルスは耳下腺が腫れる1~2日前より患者から排泄されるために、症状が出てしまったときには、すでに他の人にうつってしまっている可能性もあるため、予防することは難しいです。また髄膜炎などの合併症も多いため、任意接種ですができれば予防接種をしておいた方がよいと思われます。
このページの先頭に戻る
9.ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib ヒブ)
インフルエンザ菌は、いわゆるインフルエンザウイルスとはまったく異なる細菌です。ヒトの鼻やのどに普通にいるありふれた菌で、健康な子どもからは60~90%の割合で検出されます。風邪をひいた後の中耳炎や副鼻腔炎の原因となります。いくつか種類があり、菌に多糖体の被膜があるものと、ないものの2つに分けられます。被膜があるものは、さらにa~fの6つの型に分けられます。この中で髄膜炎などの重症感染症を起こすのは圧倒的にb型が多く、その検出率は2~5%程度といわれており、20人~50人に1人はb型インフルエンザ菌の保菌者ということになります。
b型インフルエンザ菌は、ヒトの組織や血液から、脳(髄膜)、肺、心、関節、皮膚、粘膜などの様々な部位に侵入し、髄膜炎、肺炎、心外膜炎、化膿性関節炎、蜂窩織炎、急性喉頭蓋炎などの重症感染症を起こします。どれも重症で生命に関わることがあります。この中で最も多いのが髄膜炎で、重症感染症のうち半分を占めます。日本では、毎年約600人のお子さんがb型インフルエンザ菌による髄膜炎にかかっています。髄膜炎になると、そのうち約5%が死亡し、約25%に後遺症(難聴、神経学的後遺症)が残ります。早期診断が難しく、また抗生剤に対する耐性菌の問題もあるため、治療が難しくなっているのが現状です。
b型以外の型による重症感染症もあるのですが、非常に少なく、ほとんどがb型によるものといっていいと思います。ワクチン導入前の米国では、b型インフルエンザ菌による重症感染症が、5歳未満の乳幼児10万人当たり、1年間に64~129例みられたのに対し、b型以外の菌では0.7例と極端に少なかった、というデータがあります。
米国では1988年に、b型インフルエンザ菌に対するワクチン(ヒブワクチン)が開始されました。結果、b型インフルエンザ菌による髄膜炎を含めた重症感染症は、現在ではすでに過去の病気になってしまいました。このことからもわかるとおり、b型インフルエンザ菌による重症感染症の予防には、予防接種が非常に有効であることがわかりました。ヒブワクチンは、現在ではすでに世界の約120か国で導入されています。
日本でも2008年にようやくワクチンの使用が認められました。外国における効果を見る限り、ぜひ接種しておくべきワクチンであると考えます。しかし残念ながら現時点では生産が追いついておらず、必要としているお子さん全員に接種できる状況ではありません。現在増産中とのことですので、それまで待つしかありません。
接種時期についてですが、インフルエンザ菌の重症感染症は、その90%が5歳未満の乳幼児に起こり、その中でも主に2歳未満のお子さんに起こります。これは、5歳未満の乳幼児は免疫が未熟で、インフルエンザ菌に対する抗体産生が遅れるため、と考えられています。逆に5歳以上になると免疫が成立し、重症感染症は起こりにくくなります。そのため予防接種をするのであれば、できるだけ赤ちゃんのうちに、生後2~7か月頃より始めるのが、より意味があると考えられます。
お子さんがb型インフルエンザ重症感染症を発症して入院して、家族に2歳未満のきょうだいがおられる場合、その子にもb型インフルエンザ菌による重症感染症が起こるリスクが増加します。そのため、2歳未満の他のきょうだいがおられる場合は、ご両親も含めて、抗生剤の予防投薬が必要となります。
このページの先頭に戻る
10.肺炎球菌
現在準備中です。
11.インフルエンザ
インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型の3種類に分かれ、このうち、A型とB型がヒトでの流行を起こします。C型はかぜ症状を起こすことがありますが、流行は起こしません。A型インフルエンザウイルスは、その表面上に主に2種類のタンパク質がスパイクのように突出しています。1つはヘマグルチニン(HA)、もう1つはノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれるタンパク質です。HAタンパク質は15種、NAは9種あり、自然界では動物や鳥類に広く拡がっています。このHAタンパクとNAタンパクの組み合わせにより、インフルエンザウイルスの種類が決まります。現在、ヒトに病原性を持つものは、Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)の2つです。この2つのウイルスは毎年のように突然変異を繰り返して抗原性が変化するため、同じタイプのウイルスに何回も感染する可能性があります。現在流行している新型のブタインフルエンザはAソ連型と同じH1N1です。
動物や鳥類の持っている新たなHA/NA型が、突然変異によりヒトに感染性を持つようになると、世界中で大流行するようになり、多くの人が犠牲になります。有名なのは、1918年に流行したスペインかぜで、全世界で2000万人の人が亡くなられ、これは第二次世界大戦での死者に匹敵します。最近では、アジアでH5N1、H9N2が、オランダでH7N7型のいわゆる鳥インフルエンザウイルスが発生し、これに感染したニワトリはほとんど死んでしまいますし、ヒトに感染した場合も死亡率が高く、高病原性といわれています。幸い、今のところこれらのウイルスはトリ-ヒト感染型のため、大きな流行は起こらずに済んでいますが、これらの新型ウイルスが、ヒト-ヒト感染型に変化すると、世界中で大流行となり、再び多くの犠牲者が出ると懸念されています。
インフルエンザウイルスは、空気感染により感染し、非常に感染力が強く、のどや気管支・肺の細胞内に侵入して急速に増殖しはじめ、細胞を壊しながら広がっていきます。潜伏期は48~72時間といわれていますが、さらに短いこともあります。インフルエンザの症状は、他の風邪を起こすウイルスによる症状と異なり、全身症状が強く出るのが特徴的です。さきほどまで元気だった人が、突然39℃を超える発熱を起こし、悪寒があり、全身がひどく疲れ、体のあちこちが痛くなる、といった症状から始まります。あまりにつらくて座っていられなかったり、夜眠れないこともあります。こうした全身症状の後から、鼻水、咳といった呼吸器症状が出てきます。全身倦怠感は1~2日経つと少し楽になってきます。発熱は2~5日続きます。咳は熱が下がった後もしばらく長びくことがあります。
インフルエンザは、心臓や肺に持病がある人や乳幼児、妊婦で重症化しやすいことがしられています。また脳症、肺炎、心筋炎、筋炎といった合併症を起こすことがあります。日本人に非常に多いインフルエンザ脳症は、欧米ではほとんど見られず、欧米の小児科の教科書にはインフルエンザの合併症として記載されていないほどです。日本では毎年200名程度のインフルエンザ脳症患者が発生しており、意識障害、痙攣などの症状により発症し、30 %が亡くなられ、25
%に後遺症が残ります。一部の解熱剤がこうした脳症の症状を悪化させることが知られており、現在はお子さんには使われていません。肺炎は、ウイルスが直接肺を障害することによるウイルス性肺炎と、ウイルスにより障害された肺に細菌が侵入することによる細菌性の肺炎があります。1918年のスペイン風邪や、近年みられる鳥インフルエンザ、現在世界中で大流行している新型インフルエンザでは、重症のウイルス性肺炎をきたすことがあり、死亡者がみられています。細菌性肺炎は、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が原因となり、お年寄りでは生命にかかわることがあります。
インフルエンザを早く、確実に診断できる方法はなく、地域や自分の生活範囲(学校・職場)での流行状況、特徴的な症状(突然の高熱、強い全身倦怠感、体のあちこちが痛いなど)、ウイルス抗原迅速検査などにより判断します。ウイルス抗原迅速検査は、発症後12時間以上経過しないと陽性となりにくいことが知られています。流行のピーク時で、周囲に多くの患者がおられ、症状がインフルエンザを強く疑わせる場合は、迅速検査が陰性でも、あるいは迅速検査に頼らずともインフルエンザと考えてよいと思われます。早めに来院して診断しておいてもらおうと考える方が時々おられますが、症状がないときに検査をしても何の意味もありません。
近年インフルエンザの治療薬が次々と開発され、実用化されています。オセルタミビル(商品名タミフル)、ザナミビル(商品名リレンザ)は、A型・B型インフルエンザのどちらにも有効です。アマンタジン(商品名シンメトレル)は、A型インフルエンザにのみ有効ですが耐性ウイルスが出やすいのが問題です。インフルエンザの症状の期間を短くしたり、肺炎などの重症化を防ぐ効果があります。はっきりとした因果関係は証明されていないのですが、インフルエンザにかかりタミフルを内服した10歳代の人が、異常行動をきたす可能性が指摘されており、現在10歳台の人へのタミフル投与は原則禁止とされています。ただ、インフルエンザにかかった人はこうした異常行動をとることが多いので、10歳代の人がインフルエンザにかかった場合は、タミフルの内服にかかわらず、とくに最初の2日間は保護者がつねに傍にいるようにして、異常行動をしないか注意するようにした方がよいと思います。
予防接種は、インフルエンザの予防に加え、重症化を防ぐのに効果があることがわかっています。ウイルスの抗原性は毎年変化する可能性があるため、毎年その冬に流行すると予測される株に基づいてワクチンを製造しています。そのため、インフルエンザを予防しようと考える方は、毎年ワクチンを接種する必要があります。予防接種の対象者はインフルエンザを予防したいと考える人は全てとなりますが、とくに心臓や肺などに大きな持病がある人、生後6か月以上の乳幼児、65歳以上の高齢者、妊婦は、インフルエンザにかかると重症化するリスクがあるため、予防接種が勧められます。またこうした人の家族や医療従事者、幼稚園や保育園の職員なども感染源となるため、予防接種が勧められます。ワクチンによる免疫が成立するまで1~2か月程度かかるため、流行期に入る前の10~11月頃までに接種します。小児では、1回接種では免疫を獲得する確率が低いことがわかっており、2回接種する必要があります。ワクチンはニワトリの卵から製造されるため、強い卵アレルギーがある人は接種できません。
このページの先頭に戻る
12.パピローマウイルス(子宮頸がんウイルス)
現在準備中です。
|