表2 低身長をきたす疾患
1.家族性低身長
2.体質性低身長
SGA性低身長、思春期遅発
3.生まれつきの病気による低身長
ターナー症候群、軟骨無形成症、ラッセル=シルバー症候群ほか
4.内分泌性低身長
成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症、副腎皮質過形成症ほか
5.長びく病気による低身長
慢性腎不全、アトピー性皮膚炎(厳しすぎる食事制限など)、
気管支喘息(重症で治療がなかなか有効とならない場合)、
心疾患(心不全をきたしているなど)、
消化器疾患(栄養が長期にわたり吸収されない状態が続く、下痢が続くなど)、
愛情遮断症候群・被虐待児症候群ほか
1.家族性低身長
家族みんなの体格が小さく、遺伝的なもので、特に病気とは考えられないもの。低身長の中で原因としてもっとも多いものです。
2.体質性低身長
我々ヒトの成長には、栄養や、成長ホルモン、性ホルモンといった様々な因子が作用しています。0~3歳頃までは、胎児期の急速な成長状態の影響がそのまま続き、その後思春期までは成長ホルモンが重要な役割を果たします。思春期になると性ホルモンにより急速に身長が伸びるとともに、体が成熟して大人の体になり、最終身長に到達します。体質性低身長とは、病気ではなく、これら3つの時期のうち、各時期に発育に必要な要素が他の人より少ないために発育がやや悪い人のことをいいます。これらには、SGA性低身長や思春期遅発症などがあります。このうちSGA性低身長症については、最近は世界的にも治療した方がよいという方向になってきています。
(1)SGA性低身長
SGAとはSmall for Gestational
Ageの略で、「在胎週数に比べて小さい」という意味です。同じ週数で生まれた赤ちゃんの中で、身長・体重が10パーセンタイル未満、例えば、初めての男のお子さんが40週で生まれた場合、身長で46.7cm未満、体重で2650g未満であれば、SGAとなります。
SGAの原因は色々とあって、お子さん自身に何か病気があった場合、おなかの中にいるときに胎盤がうまく働かなかったりへその緒がねじれていたりして血流が悪かったりといった理由でお母さんからうまく栄養を摂ることができなかった場合、また妊娠中にお母さんに何か病気であった場合など、おなかの中でうまく育つことができなかった状態と考えられます。
ただ、心配しないでほしいのは、SGAで生まれたお子さんのほとんど(約90%)は、その後2歳までに、正常範囲に急速に追いつきます。
しかし、2歳までに追いつくことができなかったお子さんでは、その後追いつく可能性が少ないことがわかっています(SGA性低身長症)。また、こうしたお子さんでは最終的な身長が小さくなるのみならず、成人してから肥満、高血圧、糖尿病などのいわゆる生活習慣病が、そうでないお子さんよりも多くなるといわれています。
SGA性低身長症のお子さんに対しては、成長ホルモン治療を行うことにより、最終的な身長が改善することに加え、こうした生活習慣病をきたしやすい体質も改善するのではないかといわれてきており、わが国でもSGA性低身長症に対する成長ホルモン治療が保険で認められるようになりました(平成20年10月~)。
(2)思春期遅発症
他の子どもが二次性徴により急速に背が伸びている時に、二次性徴が遅れた場合、周囲と自分との身長に大きな差がでてきます。ほとんどがいわゆる「おくて」といわれるもので、思春期の発来が他のお子さんに比べて少し遅いだけのことがほとんどですが、まれに原発性性腺機能低下症などの病気が隠れていることもあり、あまり遅れすぎる場合などは、検査が必要となります。
3.生まれつきの病気による低身長
ターナー症候群、軟骨無形成症、ラッセル・シルバー症候群といった病気(※)のお子さんは、背が低くなります。その他にも生まれつきの病気で低身長となる病気はたくさんあります。こうした病気のお子さんは、低身長の治療のみならず、その子の全体的な健康状態の把握等も必要になります。
※便宜上、「病気」ということばを用いましたが、ターナー症候群などは、病気というより1つの体質と考えよう、という考え方になってきています。
4.内分泌性低身長
成長ホルモン分泌不全性低身長症、甲状腺機能低下症、副腎機能低下症など、ホルモン分泌臓器の病気は、どの病気も低身長をきたす可能性があります。
5.慢性疾患性低身長
親にかわいがられていない子どもや虐待されている子ども、アトピー性皮膚炎で過度に食事制限をした場合、重度の喘息で治療が有効でない場合、心臓の病気で心不全がある場合、慢性腎不全、腸の病気で長期間食べ物がうまく摂れないなど、「長引く病気」は全て低身長の原因となりえます。
逆に非常に元気なのに、背が伸びないということで調べたら、こうした病気が見つかる、ということもあります。
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○専門外来では何をしているの?
低身長を訴えて来院された場合、詳しい問診と診察を行い、必要に応じ、採血検査や手の骨のレントゲン検査などで、発育状態をチェックするとともに、何か病気が隠れていないかを調べます。
さらに、詳しい検査が必要と判断された場合、必要に応じ、染色体検査や内分泌負荷試験等の検査を行います。また、一般のクリニックではできない遺伝子検査や脳のMRI検査などの検査をする必要であると判断された場合は、専門の医療機関と連携して検査をしてもらうこともあります。
○低身長症の治療はどうするの?
何か原因となる病気が明らかになった場合は、その病気に応じた治療を行うことで、身長の伸びが回復することもあります。一般のクリニックでは治療が難しい病気では、より高度な専門医療機関への紹介が必要な場合もあります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症や、SGA性低身長症、軟骨無形成症、ターナー症候群、慢性腎不全などの病気の場合は、成長ホルモン治療により治療が可能ですが、ただ背を伸ばせばよいというのではなく、それぞれの病気に応じた専門的な健康管理が必要となります。